(第49回)[商業登記編]
外国法人が発起人となる場合の会社設立手続の注意点

当社は、海外に本社のある法人(以下「外国法人」といいます。)ですが、この度、日本に新規で株式会社を設立することにしました。
但し、日本の取引先との契約等の事情から、早期に株式会社を設立する必要があるものの、日本国内には当社名義の預金口座がありません。
日本国内に当社名義の預金口座を開設してからでないと株式会社を設立することはできないのでしょうか?
また、外国法人が発起人となって株式会社を設立する場合の注意点はありますでしょうか?

1.外国法人が発起人となる場合の出資金払込口座

 株式会社(以下「会社」といいます。)を設立する場合、原則として、設立登記申請前までに、発起人が出資金全額を発起人名義の預金口座に振込する必要があります(具体的な設立手続の流れ、会社が発起人となる場合の注意点は、登記相談Q&A第15回をご参照ください。)。
 そして、発起人名義の預金口座として認められる金融機関は、以下の3パターンに限られています。
①日本国内銀行の日本国内本支店
②日本国内銀行の海外支店
③海外銀行の日本国内支店

 しかし、設問のように外国法人が発起人となる場合、海外銀行の海外支店にしか銀行口座を有していないことが多く、その場合には、上記①~③いずれの要件も満たすことができません。
 さらには、設立手続を急ぐ場合には、新規に①~③いずれかの要件を満たす銀行口座を開設したくとも、法人の銀行口座開設には時間を要しますので、想定している設立スケジュールに間に合わないことが多いです。

 但し、登記手続上の例外措置として、設立時取締役(代表取締役でなくとも可)の個人名義の預金口座を発起人名義の預金口座に代えて出資金を受領する預金口座とすることが可能です。
 ですが、平成27年3月16日以降、代表取締役が、日本国内に住所を有しなくとも設立登記が可能となった影響(平成27年3月16日民商第29号通知)で、外国法人が発起人となる会社の場合、取締役全員が日本国内に住所を有しないケースも増加しています。
 そのため、設立時取締役の個人名義の預金口座も上記①~③の要件を満たす預金口座が無いというケースがあります。

 そこで、さらなる特例措置として、平成29年3月17日に、発起人・設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合に限り、発起人・設立時取締役以外の第三者(個人・法人いずれでも可)の預金口座を出資金を受領する預金口座とすることが認められました(平成29年3月17日民商第41号通達)。
 例えば、外国法人が既に日本国内に子会社を有している場合には、当該子会社であれば、日本国内に預金口座を有しているでしょうから、当該子会社名義の預金口座を使用することが考えられます。
 初めて日本国内に会社を設立する場合には、設立登記を依頼する司法書士名義の預金口座を使用することも考えられます。
 なお、上記特例措置を使用する場合には、通常の設立登記書類に加え、発起人から当該第三者に対する委任状を添付する必要があります。

2.宣誓供述書と添付書面の日本語訳文

 会社が発起人となる場合、公証役場での定款認証の際に、当該会社の印鑑証明書・登記簿謄本が必要です。
 但し、外国法人が発起人となる場合、韓国等登記制度がある国を除いて、当該会社の印鑑証明書・登記簿謄本を取得することができません。
 したがって、その代わりに、宣誓供述書を作成する必要があります。
 宣誓供述書は、外国法人の商号・本店所在地・事業目的・役員・株式数・資本金額等、日本の登記簿謄本と同様の事項を記載した上で、当該外国の官憲(現地公証役場や大使館・領事館等)で認証してもらう必要があります。
 具体的な作成方法等は、国によって異なる部分が多々あるため、当該外国官憲に予め相談の上、作成する必要がありますので、ご注意ください。

 他方で、宣誓供述書・印鑑証明書等の添付書類が、外国語で作成されている場合には、日本語訳文も作成の上、併せて提出する必要があります。
 日本語訳文は公的機関で作成する必要はなく、自社で作成したもので足ります(適宜の翻訳会社で作成したものでも構いません。)。

3.当事務所に依頼することのメリット

 発起人・取締役がいずれも一人のみである、いわゆる一人会社の場合には、定款等の必要書類の内容も定型なもので対応できるケースが少なく無いので、ご自身で設立登記手続をすることも可能かと考えます。
 しかし、設例のように外国法人が関与するようなケースではイレギュラーな対応が多々あるため、設立手続に慣れていないと対応に苦慮するケースが少なくありません。
 当方であれば、多数の企業から商業登記手続の依頼・相談を受けているという実績があるため、設例のようなケースでも適切なアドバイスが可能です(但し、英語等外国語でのやり取りを希望される場合には、別途の専門家を紹介可能です。)。
 本事例に限らず、会社設立を検討する方がいましたら、お気軽にご相談ください。

以上