(第29回)[商業登記編]
単元株制度導入のメリットと導入方法

当社は、1株あたりの価値を下げて出資を受けやすくするために株式分割を行う予定であり、その際に単元株制度の導入を考えています。
具体的にはどのような手続が必要でしょうか。
また、単元株制度を導入した場合、どのようなメリットがあるでしょうか。

1.単元株制度導入のメリット

 単元株制度とは、定款により、一定の数の株式を「一単元」の株式と定め、株主総会において、一単元の株式につき1個の議決権を認め、単元未満の株式には議決権を認めないこととする制度です(会社法188条1項、189条1項)。
 他方で、設問記載の株式分割の手続等の詳細については、登記相談Q&A第9回をご参照ください。

 株式会社が単元株制度を導入するメリットは、以下の通りです。

<単元株制度導入のメリット>

  1. ① 株式分割等により株式を細分化する場合又は少数株主が多くなった場合に、単元株を設定することにより、少数株主の権利を制限し、かつ株主管理コストを抑えることが可能なこと
    *具体的には、単元未満株式しか有しない株主(以下「単元未満株主」といいます。)には、株主総会の招集通知を発送する必要がありませんので、発送費用を削減することが可能です。
     また、単元未満株主は、株主総会に出席できず、質問する権利が無いため、いたずらに総会当日の株主出席数又は株主からの質問数が増加することを防ぐことが可能です。
     但し、株主名簿の閲覧請求権や単元未満株式の買取請求権等、会社法189条2項各号に定める権利を排除することはできませんので、ご注意ください。
  2. ② 1株の価値を細分化したまま、少数株主の権利を制限できること
    *単元未満株式でも、配当を受け取る権利はあります(会社法189条2項6号、会社法施行規則35条)。
     そのため、単元未満株式であっても、議決権に拘らない出資者であれば引き受け手になってくれますし、1株あたりの価値が低いままなので、広く出資者を募ることが可能です。

 なお、単元株制度以外に、細分化しすぎた株式を取りまとめ、出資単位を引き上げるための手続として、株式併合(会社法180条)があります。
 しかし、株式併合は、以下の理由から、単元株を設定するよりもデメリットが大きいため、特に上場会社及び上場を目指す会社ではほとんど使われません。

<株式併合のデメリット>

  1. ①発行済株式を一定の割合で併合するため、1株あたりの価値が高くなり、出資者にとって出資し辛くなること。
  2. ②併合によって1株未満の端数が生じた場合には、会社は1株単位にとりまとめて競売の上、競売代金を株主に交付する必要があるため、端数が多く生じると株価下落のリスクがあること(会社法235条)。
  3. ③上記②により、競売の手続が必要になった場合、会社にとって手間と費用が余分にかかること。

2.単元株を設定できる範囲

 上記の通り、会社にとってはメリットの大きい単元株制度ですが、少数株主の権利制限になるため、設定できる範囲には制限があります。
 一単元の株式となる数は、「1000及び発行済株式総数の200分の1に当たる数」を超えることができません(会社法188条2項、会社法施行規則34条)。
 例えば、発行済株式総数が1万株の会社であれば、一単元の株式数は50株が上限です。
 この点、平成21年4月1日付施行で会社法施行規則が改正され、改正前は「発行済株式総数の200分の1」という要件はありませんでした。
 なお、上記改正前に200分の1を超える単元株を設定していた会社の定款は、当該定款規定を変更するまで、従前通り有効です(施行規則改正附則3条)。

3.単元株制度導入の手続

 前述の通り、単元株を設定する場合、その旨を定款に定める必要があります。
 したがって、原則として株主総会の特別決議により定款を変更して行います(会社法309条2項11号)。
 しかし、設問のように株式分割と同時に行い、かつ定款変更の前後において各株主の議決権数が減少しない単元株式数の設定の場合には、取締役会の決議で行うことが可能です(会社法191条)。
 例えば、発行済株式総数が1万株の会社が、10分割をする際に、一単元の株式の数を10株と設定する場合です。

4.当事務所に依頼することのメリット

 単元株を設定する場合、併せて単元未満株主に関する定款規定や株式取扱規程を定めることが一般的です。
 これらの対応や株式分割を同時に行う場合など、スキームによって必要となる手続が変わってきますので、適切な対応をするのは容易ではありません。
 当方であれば、今まで多数の会社の定款規定や株式取扱規程の精査を行い、経験を積んでいますので、正確かつ迅速にアドバイスをすることが可能です。
 単元株設定等の変更手続を当方にご依頼された場合は、定款変更案の提案から登記手続まで一括して行いますので、お気軽にご相談ください。
 なお、単元株設定の登記手続の登記申請に添付する書類は、原則として株主総会議事録のみで足ります。

以上