(第3回)[商業登記編]
取締役等に変更が全くないのに、変更登記をする必要があるのか?

私は、株式会社(取締役会設置会社)を経営しているのですが、取締役等の役員は全て私の親族がなっています。今後も役員を変更するつもりはないのですが、役員を変えなくても任期ごとに変更登記を申請する必要がありますか?

 結論から申しますと、役員を同じ人が就任し続けることにしたとしても、任期ごとに、役員変更登記を申請する必要があります。
 役員の任期については、取締役が選任後2年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時まで(会社法332条。但し、非公開会社であれば、定款に定めることにより、10年まで任期を伸長することが認められています。)、監査役が4年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時まで(会社法336条。取締役同様、10年まで伸長可能です。)で、それぞれ任期が満了します。
 そのため、定款に任期伸長の定めを置かない限りは、少なくとも約2年に1回、取締役再任登記を申請する必要があります。
 例えば、決算期(事業年度の末日)が3月末であれば、6月末までに定時株主総会を開催(中小企業であれば税務申告の関係で定時株主総会の開催期限が5月末までになるかと思います。)し、その終結の時に役員の任期が全て満了するため、同総会で、同一人を役員に選任し直す(もちろん別の人を選任しても構いません。)必要があります。代表取締役についても、取締役の任期が満了した時に、任期が満了しますので、株主総会後に取締役会を開催し、同じように選定し直す必要があります。
 そして、選任後、2週間以内に本店所在地の管轄登記所に、役員変更登記を申請する必要があります。法務局に納付する登録免許税は、資本金が1億円以下の株式会社なら1万円、1億円を超える株式会社なら3万円です。2週間以内に登記を申請しなかった場合には、代表取締役個人が100万円以下の過料(会社法976条)に処せられる可能性がありますので、ご注意ください。
 実際に過料の制裁を受けるケースは多くなく、登記申請期限経過後であっても、登記申請をすること自体は可能です。とはいえ、過料の制裁を受ける可能性もゼロではありませんので、可能な限り、登記申請期限は遵守すべきと考えます。
 他方で、取締役再任登記を申請しないまま、他に変更登記等も行わなかった場合、最後に変更登記を申請した時から12年が経過した後、官報で公告される等一定の手続きが法務省でなされ、その会社は解散したものと看做されてしまい、職権で解散の登記がされることになります(会社法472条。以下「みなし解散」といいます。)。
 なお、みなし解散の登記がされた後でも、3年以内であれば、会社継続の登記を申請することにより、元に戻すことは可能です。
 とはいえ、登記簿上このような記録が残りますので、会社の信用にもかかわりますから、取締役再任登記を忘れずに申請するようにしましょう。
 当方に役員が全員再任する場合の変更登記を検討されている企業がありましたら、お気軽にご相談ください。
 なお、役員変更登記に添付する書類は下記の通りです。

役員変更(取締役・監査役・代表取締役全員の改選)登記
(1)定時株主総会議事録(取締役と監査役の選任の旨)
(2)取締役会議事録(代表取締役選定の旨)
(3)取締役及び監査役の就任承諾書
(4)代表取締役の就任承諾書
*但し、(3)(4)の就任承諾書は各議事録で就任承諾した旨を記載すれば、その議事録を援用することが可能です。
(5)取締役会に出席した役員の印鑑証明書
*但し、代表取締役を再任した場合は、会社の代表印をその議事録に押印すれば、印鑑証明書の添付が不要です。

以上