みずほ銀行に対する行政処分と反社会的勢力との関係遮断に向けた取組み

1 みずほ銀行に対する行政処分

 金融庁は、平成25年9月27日、みずほ銀行に対して、業務改善命令を下しました。
 具体的には、信販会社であるオリエントコーポレーション経由の提携ローンの事後チェックで228件もの反社会的勢力との取引を把握したが、その後も2年以上も反社会的勢力との取引の防止・解消のための抜本的な対応を行っていなかったということです。
 ここでのポイントは、関係遮断を実現したかではなく、関係遮断に向けた取り組みを適切に行っていたかでした。

 このみずほ銀行に対する行政処分は、平成23年10月に施行された暴力団排除条例以上に影響力があり、全国銀行協会、生命保険協会、日本損害保険協会等の金融業界団体がそれぞれ反社会的勢力排除の取り組みを強化することを公表しました。金融庁においても平成26年6月、「主要行等向けの総合的な監督指針」を始めとする各種金融機関向けの監督指針および事務ガイドラインならびに「金融検査マニュアル」等が改正されました。
 今後は、他の業界団体に広がることになると思われます。

2 反社会的勢力との関係遮断に向けた取組み

 みずほ銀行に対する行政処分を受けて、金融業界はもちろん、他の業界においても、今後、企業の反社会的勢力との関係遮断に向けた取組みにより一層、力を注ぐ必要があります。以下、その一例を掲げます。

  1.  反社会的勢力データベースの構築と適切な更新(情報の追加、削除、変更等)

     反社会的勢力のデータベースの構築に向け全国暴力追放運動推進センター、警視庁管内特殊暴力防止対策連合会、暴力団追放運動批准都民センター等に入会して、情報収集を行ったり、企業間や業界団体で情報共有を行ったりしています。
     適切な更新は、上記「主要行等向けの総合的な監督指針」の改正で導入されました。
     情報の削除については、慎重に行う必要があります。特定の相手方について反社会的勢力との関係遮断という観点から情報を集めて検討した場合、集めた情報では関係遮断しないという結論になった場合、集めた情報を削除するよりも検討経過・結果を記録しておくべきでしょう。

  2.  暴力団排除条項の徹底

     全ての契約書に暴力団排除条項を盛り込むことを徹底すべきです。
     企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針や暴力団排除条例施行前に締結された契約書の場合には、暴力団排除条項を盛り込んだ契約書で更新させます。

  3.  個別に既存取引反社会的勢力との関係遮断

     暴力団排除条項があればそれに基づいて主張すればよいのですが、ない場合でも契約書上の他の解除事由、信頼関係破壊の法理、錯誤無効(民法95条)、公序良俗違反による無効(民法90条)を主張できないかと検討します。その他、合意解除を求めて交渉することも多いです。
     取引先が反社会的勢力であることの立証は警察からの情報提供により行うことが多いと思います。
     取引先がグレーゾーン(元暴力団員、暴力団関係者、共生者、密接交際者、社会的に避難される関係等)の場合には、立証の難易度は高いですが、取引継続した場合のレピュテーションリスクも非常に高いので、訴訟リスクをとってでも関係遮断に向けて行う必要があるでしょう。

以上