中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律(以下、略して、「中小企業金融円滑化法」といいます)の終了

1 中小企業金融円滑化法制定の経緯

 中小企業金融円滑化法は、平成20年秋のリーマンショックを受けて、民主党に政権交代して金融担当大臣に就いた亀井静香国民新党代表(当時)が金融モラトリアム法として主導して推し進め、平成21年11月30日成立、同年12月4日から施行されていた法律です。
 平成23年3月31日までの時限立法(有効期限を定めて立法化された法令のことです)でしたが、東日本大震災の影響等もあって期限が平成24年3月31日、平成25年3月31日までと2度にわたり延長されていました。
 本日現在はすでに終了しています。

2 中小企業金融円滑化法の内容

 この法律では、

  1.  銀行や信用金庫等の金融機関は、中小企業から債務の弁済にかかる負担の軽減の申込みがあった場合には、できる限り、貸付条件の変更、旧債の借換え、中小企業の株式の取得であって債務を消滅するためにするもの(いわゆるDES)等(以下「貸付条件の変更等」といいます。)の適切な措置をとること、
  2.  中小企業から債務の弁済にかかる負担の軽減の申込み又は求めがあった場合には、他の金融機関、政府関係金融機関、信用保証協会、企業再生支援機構、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会等との連携を図りつつ、できる限り、貸付条件の変更等の適切な措置をとること

が義務付けられていました。

 これらの義務は法的義務ではなく、努力義務(違反しても罰則その他の法的制裁を受けない義務のことです。)にとどまっていますが、平成24年11月30日時点で、金融機関は中小企業からの条件変更等の申込みに対して97.4%もの申込みを承諾していますので、単なる努力義務とは言えないかもしれません。

3 中小企業円滑化法の終了と中小企業に与える影響

 中小企業金融円滑化法を利用して、貸付条件を変更した債務者数は30万~40万社程度と言われていますが、抜本的な経営改善・事業再生等が必要な中小企業数は、おおむね5万~6万社程度となると推計されていますので、それだけの数の中小企業を延命させてきたと言えます。
 このように中小企業の延命措置として機能してきた中小企業金融円滑化法も本年3月31日で終了となりました。

 金融機関の中小企業支援の対応は変わらないとも言われていますが、貸付条件の変更等が認められた中小企業は当初の条件に戻されてしまうかもしれません。そうでなくても更なる貸付条件の変更等が認められない可能性も十分あります。
 中小企業金融円滑化法の終了に伴い、相対的に破綻の危機に陥る中小企業は増加するものと思われますが、何としてでも破産等の最悪の事態を回避して、企業再生を果たすことを目指すべきと思います。

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 同書は、実務で経験しなければわからないノウハウ等も盛り込んでいますので、入門といいながら、相当知識を持った方が読まれても十分に満足のいく内容となっています。
 企業再生をお考えの企業や企業再生を支援する方々にお読みいただけると大変うれしく思います。

以上