GREEvsDeNA 知財訴訟高裁判決
~ソーシャルゲームに関し、地裁では認められた「魚の引き寄せ画面」についての著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害も否定され、その他ゲームの主要画面の変遷並びに素材の選択及び配列に係る著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害、不正競争防止法違反のいずれも認められなかった事案(知財高裁平成24年8月8日判決)~

1 事案の概要

 本ウェブサイトでも、本年4月1日付で取り上げた訴訟の高裁判決です
 念のため、事案の概要を記しますと、株式会社ディー・エヌ・エー(以下「DeNA」といいます)らが製作・配信していたソーシャルゲーム「釣りゲータウン2」(以下「DeNAゲーム」といいます)について、グリー株式会社(以下「GREE」といいます)が、自社が製作・配信していたソーシャルゲーム「釣り★スタ」(以下「GREEゲーム」といいます)の著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害し、また不正競争防止法違反にも当たる等と主張して、DeNAゲームの差止めや損害賠償等を求めた事案です。

2 主な争点

  1. (1)

     両ゲームの「魚の引き寄せ画面」は、主に以下のような共通点がありました。

    1. (a)水面より上の様子が画面から捨象され、水中のみが真横から水平方向に描かれている点
    2. (b)水中の画像には、画面のほぼ中央に、中心からほぼ等間隔である三重の同心円と、黒色の魚影及び釣り糸が描かれ、水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に青色で、下方に岩陰が描かれている点
    3. (c)釣り針にかかった魚影は、水中全体を動き回るが背景の画像は静止している点

     裁判では、この「魚の引き寄せ画面」について、著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否が問題となりました。
     地裁判決では、この点について、著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害と判断し、GREEの損害賠償請求が一部認められました。

  2. (2)

     また、ゲームの主要画面の変遷並びに素材の選択及び配列に係る著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否も争点となりました。

  3. (3)

     さらに、「不正競争防止法違反」の主張は、ユーザーに対してDeNAゲームをGREEゲームと混同させることでユーザーを不当に誘引したという、いわばDeNA側がGREEゲームの人気に「フリーライド(ただ乗り)」したというものです。

     これが認められるためには、少なくともDeNA側が両ゲームを混同させるような表示(商品等を識別する「商品等表示」)を行っていたことが必要です。
     裁判では、GREEゲームの「魚の引き寄せ画面」が周知な「商品等表示」か否か、DeNAゲームの「魚の引き寄せ画面」が「商品等表示」として使用しているかが争点となりました。

3 判決要旨

  1. (1)

    「魚の引き寄せ画面」の著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否

     高裁判決では、著作物の翻案とは、既存の著作物に依拠し、かつその表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作する行為のことと前置きして、主として、以下のように認定し、翻案に該当しないとして著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害を否定しました。

    1. (a) 釣りゲームにおいて、まず、水中のみを描くことや、水中の画像に魚影、釣り糸及び岩陰を描くこと、水中の画像の配色が全体的に青色であることは、他の釣りゲームにも存在するものである以上、実際の水中の影像と比較しても、ありふれた表現と言わざるを得ない。
    2. (b) 水中を真横から水平方向に描き、魚影が動き回る際にも背景の画像は静止していることは、原告作品の特徴の1つであるが、アイデアというべきものである。
    3. (c) 三重の同心円を採用することは、弓道、射撃及びダーツ等における同心円を釣りゲームに応用したものというべきものであって、アイデアの範疇に属するものである。
    4. (d) 黒色の魚影と釣り糸を表現している点についても、吊り上げに成功するまでの魚の姿を魚影で描き、釣り糸も描いているゲームは、従前から存在していたものであってありふれた表現ともいうべきである。
  2. (2)

     主要画面の変遷並びに素材の選択及び配列に係る著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害の成否

     高裁判決では、主として、以下のように認定し、翻案に該当しないとして著作権(翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)侵害を否定しました。

    1. (a) 両ゲームは,いずれも携帯電話機用釣りゲームであり,釣り人の実際の行動という社会的事実に立脚し,釣りの準備のため釣り場の情報を収集し,目的の魚種に適した釣具を選んだり購入したりして装備を整え,釣り場に行って釣りを行い,釣果を確かめ,同じ釣り場で引き続き釣りをするかどうかを決め,違う獲物を狙う場合には装備を改めたり釣り場を変えたりするなど,基本的な釣り人の一連の行動を中心として,この社会的事実の多くを素材として取り込み,釣り人の一連の行動の順序に即して配列し構成したものである。上記のような画面を備えた釣りゲームが従前から存在していたことにも照らすと,釣りゲームである原告作品と被告作品の画面の選択及び順序が上記のとおりとなることは,釣り人の一連の行動の時間的順序から考えても,釣りゲームにおいてありふれた表現方法にすぎないものということができる。
    2. (b) 被告ゲームには,原告ゲームにはない決定キーを押す準備画面や魚が画面奥に移動する画面があり,逆に原告ゲームにある海釣りか川釣りかを選択する画面や魚をおびき寄せる画面がないなどの点においても異なること
    3. (c) 原告ゲームと被告ゲームとはその他にも具体的相違点があること
  3. (3)

     不正競争防止法違反の成否
     高裁判決では、GREEゲームの「魚の引き寄せ画面」が周知な「商品等表示」であるとはいえないし、DeNAゲームの「魚の引き寄せ画面」が「商品等表示」として使用しているとは言えないとして、不正競争防止法の成立を否定しました。

4 考察

 この判決は、最近、話題のソーシャルゲームに関する著作権侵害訴訟の知財高裁判決として非常に注目されていましたが、地裁判決が逆転されたため、ますます注目を集めることになりました。今年の重大判決の1つと言ってよい判決です。
 デジタルコンテンツに関する著作権分野をよく取り扱う当職としては、地裁判決について、利益衡量論とかバランス感覚としては非常に優れているが、「創作性」の認定において、違和感を感じていました。
 今回、高裁判決を読んで、この部分がクリアになりました。やはりアイデアやありふれた表現の範疇であろうと。
 GREEは、即日、最高裁判所に上告したとのプレスリリースを出していますが、最高裁で逆転するのは非常に難しいと思われます。
 本件と並行して、ソーシャルゲームに関する紛争が何件か起きているようですが、いずれも判決までたどり着いたものはなく、本件は、今後のリーディングケースとして参考になるでしょう。

以上