過去の新法・新判例

2018年11月01日

リツイートによる著作者人格権(同一性保持権)侵害について

弁護士 櫻井康憲

1 はじめに


 SNSが身近なものとなって久しいですが、個人や企業が気軽に文章・画像を投稿できるようになり、世界中の個人・企業と交流することが可能となった一方で、意図的/意図的でないにかかわらず、これに伴う第三者の著作権その他の権利侵害について問題視される例も増えています。

 特に、ツイッターにおける「リツイート」機能やその他SNSサービスにおける同種の機能は、自ら主体的に作成・収集した情報を発信するのではなく、第三者の発信した情報を再拡散するという性質があるため、その行為による権利侵害のおそれについて投稿者があまり気にかけない場合が多いように思われます。

 そこで、本稿では、リツイートによる著作者の権利の侵害の有無が問題となった事件1をご紹介いたします。


2 事案の概要・争点


 本件は、職業写真家である原告が、自ら撮影し、著作権を有する写真(以下「本件写真」といいます)を自己の運営するウェブサイトに掲載したところ、ツイッターに関連する以下の3つの事実が原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして、ツイッター社及び同社の日本における子会社に対して、各行為者の発信者情報(電子メールアドレス、IPアドレス等)の開示を求めた事件です。

 ①氏名不詳者が原告に無断でツイッターのアカウント(本件アカウント1)のプロフィール画像として本件写真の画像をアップロードしたことにより、本件アカウント1のタイムラインに本件写真が表示されるようになったこと
 ②氏名不詳者がツイッターのアカウント(本件アカウント2)を利用して、原告に無断で本件写真の画像ファイルを含むツイート(以下「本件ツイート」といいます)を行ったことにより、本件ツイートのURL及び本件アカウント2のタイムラインに本件写真が表示されるようになったこと
 ③氏名不詳者ら(以下「本件リツイート者ら」といいます)が、ツイッターのアカウント(本件アカウント3~5)を利用して本件ツイートをリツイート(以下「本件リツイート」と総称します)したことにより、本件アカウント3~5の各タイムラインに本件写真が表示されたこと
  ※ なお、①及び②による公衆送信権(著作権法23条1項)侵害については原被告間で争いがありませんでした。

 この事件の第一審2において、裁判所は、上記③について公衆送信権侵害及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権、名誉声望保持権)侵害のいずれについても否定し、本件リツイート者らに関する発信者情報の開示請求を棄却しました。
 これに対し、控訴審判決(以下「本判決」といいます)では、上記③について公衆送信権侵害及び名誉声望保持権の侵害については原審同様否定した一方で、同一性保持権及び氏名表示権の侵害を認め、本件リツイート者らに関する発信者情報の開示請求を認容しました。

 本判決では、多くの争点について判断がなされていますが、本稿では、特に問題となった「リツイートによる同一性保持権侵害の有無」に関する判断に絞ってご紹介いたします。


3 同一性保持権侵害の有無について


(1)同一性保持権(一般論)

 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利(同一性保持権)を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないとされています(著作権法20条1項)。

 ただし、著作権法20条2項は、以下の各場合については例外的に改変を認めています。
 ⅰ 学校教育上の目的上必要な用字・用語その他の改変(1号)
 ⅱ 建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変(2号)
 ⅲ コンピュータ・プログラムの著作物の改変(3号)
 ⅳ 著作物の性質ならびに利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変(4号)

(2)リツイートの仕組み

 「リツイート」とは、「第三者のツイートについて、自己のタイムラインに表示させたり自己のフォロワーにリツイートをしたと知らせたりすることよって、当該第三者のツイートを紹介ないし引用すること」です(第一審判決より)。

 リツイートにより第三者のツイートが自己のタイムラインに表示されるのは、リツイートを行うと、リツイートを行った者のタイムラインのURLにリンク先であるツイートのURLへのインラインリンク(※)が自動的に設定され、同URLからユーザーのパソコン等の端末に直接画像ファイルのデータが送信されるためです。
※ インラインリンク
   リンク元のウェブページが表示された際に、「リンク先のコンテンツ」が自動的に表示されるが、そのコンテンツデータは閲覧するユーザーのコンピュータに直接送信され、リンクを貼る元のサーバーへの送信や蓄積は行われない方式のリンク3

 なお、ツイッターの仕様上、画像を含むツイート(及びリツイート)は、当該ツイート等が含まれるタイムラインにおいては、ツイートやリツイートの結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により、タイムライン上に表示する画像の位置や大きさなどが指定されるため、当該ツイートに伴いアップロードされ、保存された画像がそのまま表示されるものではありません。

参考イメージ1

(3)裁判所における判断

 第一審判決

 第一審判決は、上記(2)のリツイートの仕組み上、本件リツイートにより本件写真の「画像ファイルの改変も行われないから同一性保持権侵害は成立しない」と判示しています。

 → 「本件写真の画像ファイルの改変が行われていない」ことを理由として、同一性保持権の侵害は成立しないと判断しました。

 本判決

(ア)同一性保持権侵害の有無

 一方、本判決は、リツイート者のタイムラインにおいて表示されている画像は、リツイート元のツイートに伴いアップロード等された「画像データ自体に改変が加えられたものではない」としつつも、「表示するに際して、HTMLプログラムやCSSプログラム等により、位置や大きさなどを指定されたために」本件リツイート者らの「タイムラインにおいて表示されている画像は」イメージⅢのような「画像となったものと認められるから、本件リツイート者らによって改変されたもので、同一性保持権が侵害されていることができる」と判示しました。

 → 画像データ自体に改変が加えられたものではないが、表示に際してプログラムにより位置や大きさなどを指定されたために、表示される画像が改変されていることを理由として、同一性保持権の侵害を認めました。

(イ)権利侵害の主体

 次に、権利侵害の主体については、「本件リツイート行為の結果として送信されたHTMLプログラムやCSSプログラム等により位置や大きさなどが指定されたために、改変されたということができるから、改変の主体は本件リツイート者らであると評価することができるのであって、インターネットユーザーを改変の主体と評価することはできない……。」と述べています。

 → 画像の改変は、本件リツイートの結果として送信されたプログラムにより行われていることを理由して、本件リツイート者らが改変の主体=権利侵害の主体であると判断しました。

(ウ)リツイート元のツイートで既に同様の改変が起きていることとの関係

 被告らは、リツイートによりタイムラインに表示されている画像(上記イメージⅢ)は、リツイート元のツイートの画(上記イメージⅡ)と同じ画像であるから、改変を行ったのは、本件アカウント2の保有者(リツイート元のツイートを行った者)であると主張していました。
 しかしながら、裁判所は、リツイートによりタイムラインに表示されている画像(上記イメージⅢ)は、「原告の著作物である本件写真と比較して改変されたものであって」「本件リツイート者らによって改変されたと評価することができるから、本件リツイート者らによって同一性保持権が侵害されたということができる」としています。

   → リツイート元のツイートにおいて同一の改変がなされていたとしても、表示される画像が本件写真(オリジナルの画像)と異なるものとなっていることを理由に、改変の事実及び同一性保持権侵害を認めました。
参考イメージ2

(エ)「やむを得ない」改変(上記(1)ⅳ)に該当するか

 被告らは、本件リツイートに伴う改変は、ツイッターのシステム上、複数の写真を限られた画面内に無理なく自然に表示するために自動的かつ機械的に行われるものであって、「やむを得ない」改変に該当すると主張しましたが、本判決は、本件リツイートが違法なツイートのリツイートであることを理由に「やむを得ない」改変には該当しないと判断しました。

   →違法なツイートのリツイートに伴う改変は、「やむを得ない」改変には該当しない

4 おわりに


 本判決では、上記のとおり、違法なコンテンツを含むツイートのリツイートを行った者を主体とする同一性保持権の侵害が認められました。


 本判決は、違法なコンテンツを含む投稿をリツイートした場合には、「やむを得ない」改変には該当しない旨の判断をしていますが、リツイートを行う際に、リツイート元のツイートに含まれるコンテンツの適法性について都度確認することを求めるのはやや酷なように思われます。
 この意味で、本判決の結論の妥当性にはやや疑問があるところであり、実際に同様の視点での議論も見受けられます。この点については、判例・裁判例の集積及び議論の深化が待たれるところです。

 近年は、企業アカウントを作成してSNSを活用した広告宣伝等も一般的に行われています。
 本判決の判断内容を踏まえると、自らの作成したコンテンツを投稿等する場合とは異なり、他者のコンテンツをリツイート等する場合には、そのコンテンツが第三者の権利侵害をしていないかにつき、慎重に確認することが必要となります。

 個別の投稿やリツイート等の適法性については、各投稿等の内容に応じた詳細な検討が必要となりますので、企業アカウントを利用したSNSのご活用をお考えの場合には、お気軽にご相談いただけますと幸いです。


以 上
    __________________
    1知財高判平30年4月25日・裁判所ウェブサイト。
    2東京地判平28年9月15日・裁判所ウェブサイト。
    3このような仕組みであることを理由に、本件リツイートによる公衆送信権侵害については、第一審判決、本判決ともに否定しています(なお、本判決では、原審の判断になかった本件リツイートの公衆送信権侵害幇助該当性についても触れ、これを否定しています)。
    4厳密には、ツイートに伴う画像のアップロード時にも一部の改変(サイズ変更等)が行われていますが、本コラムでは説明の便宜のため捨象しています。
PAGE TOP