過去の新法・新判例

2018年05月01日

民泊新法(住宅宿泊事業法)

美和 薫

1 いわゆる民泊新法が本年6月15日に施行されます


 ここ数年、インターネットを通じて住宅の一室等を旅行者に貸し出す「民泊サービス」が急激に増加しました。この「民泊サービス」は、反復継続して有償で行う場合、本来は「旅館業」として旅館業法の許可を受ける必要があるところ、その許可を受けずに行われているケースが圧倒的に多く、法的には極めてグレーと考えざるを得ない状況でした。
 そこで、一定のルールの下で健全な民泊サービスの普及を図るため、平成29年6月にいわゆる民泊新法(正式名称は「住宅宿泊事業法」ですが、以下「民泊新法」といいます)が成立しました。
 同法は、本年6月15日より施行されます。

2 民泊新法における民泊の位置づけ


 民泊新法では、その住宅宿泊事業法という正式名称から明らかなように、「住宅」における宿泊事業を想定しています。
 「住宅」の要件は、①当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要な一定の設備が設けられていること、②現に人の生活の本拠として使用されている家屋や、入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものであることです(第2条第1項)。居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションなどは該当しません。
 また、当該家屋は人が居住する「住宅」である以上、宿泊事業が主たる用途になってしまうことはおかしいため、人を宿泊させる日数について1年間で180日を超えないことという制限が課されています(第2条第3項)。

3 「住宅宿泊事業」と「住宅宿泊管理事業」と「住宅宿泊仲介業」


 住宅宿泊事業法では、①「住宅宿泊事業」、②「住宅宿泊管理業」、③「住宅宿泊仲介業」について一定のルールが定められています。

 ①「住宅宿泊事業」とは、まさに民泊サービスを提供する事業のことです。
 ②「住宅宿泊管理業」とは、住宅宿泊事業者(民泊業者)から委託を受け、報酬を得て、民泊サービスにかかる業務や対象住宅の維持保全に関する業務を行う事業のことです。
 ③「住宅宿泊仲介業」とは、民泊サービスの媒介等を行う事業のことです。空き室を短期で貸したい人と宿泊を希望する旅行者等をインターネット上でマッチングするビジネスは、これに当たります。

 住宅宿泊事業者は、自身が当該住宅を不在にした状態で①の「住宅宿泊事業」を行う場合、自身が行うべき業務を②の「住宅宿泊管理業」を行う者に委託する必要があります。
 また、住宅宿泊事業者は、③の「住宅宿泊仲介業」を行う者が運営するインターネット上の民泊仲介サイトを利用して宿泊者を募集するケースが多いと思われます。
 したがって、これら①~③の事業形態は、互いに密接な関係があります。

4 「住宅宿泊事業」(①)について


(1) 「住宅宿泊事業」を行うためには、届出が必要です(第3条)。

 もっとも、届出の場合、届出内容に対する形式的なチェックを通れば、届出番号が付与されますので、許可制に比べますと、かなりハードルは低いと言えます。また、民泊新法に基づく届出や申請、報告などの手続を電子的に行うことができるよう、「民泊制度運営システム」が整備されました。このシステムを利用し、インターネットにより届出を行うことが可能です。

 なお、届出をせずに住宅宿泊事業を営みますと、無許可で旅館業を営んでいることになります(いわゆる違法民泊)。この場合、「6月以下の懲役または100万円以下の罰金」(またはその併科)の処罰を受ける可能性がありますので、ご注意ください(改正旅館業法第10条第1号)。

(2) 住宅宿泊事業者は、その業務について、以下のような義務を負います(第5条~第10条、第13条~
第14条)。

ア 宿泊者の衛生の確保を図るための措置を講じること(宿泊者数の制限、定期的な清掃など)
イ 宿泊者の安全の確保を図るための措置を講じること(非常用照明器具の設置、避難経路の表示な
ど)
ウ 外国人観光客である宿泊者の快適性・利便性の確保を図るための措置を講じること(外国語によ
る施設利用方法の説明など)
エ 宿泊者名簿の備付け
オ 宿泊者に対し、周辺地域の生活環境への悪影響(騒音など)の防止に関し必要な事項について説
明すること
カ 周辺地域の住民からの苦情等に適切かつ迅速に対応すること
キ 住宅ごとに標識の掲示
ク 人を宿泊させた日数等について定期報告

(3) 住宅宿泊事業者は、対象住宅の居室の数が5を超えるとき、対象住宅に人を宿泊させる間不在となると
き(家主不在型)は、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません(第11条)。この場合、
委託を受けた住宅宿泊管理業者において、上記(2)ア~カを行うことになります(第36条)。

 また、住宅宿泊事業者は、宿泊サービスの提供にかかる契約の仲介を委託する場合、住宅宿泊仲介業
者または旅行業者に委託しなければなりません(第12条)。

5 「住宅宿泊管理業」(②)について


 住宅宿泊管理業を営もうとする場合、国土交通大臣の登録を受ける必要があります(第22条第1項)。「住宅宿泊管理業者」とは、この登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者をいいます(第3条第7項)。上記のとおり、家主不在型の住宅宿泊事業では、管理業務を「住宅宿泊管理業者」に委託する必要があります(第11条)。

 なお、住宅宿泊管理業者が違法民泊の管理業務を行った場合、無許可の旅館業営業罪のほう助罪(刑法第62条第1項)で処罰される可能性があります。そのため、住宅宿泊管理業者は、管理業務の受託にあたって物件の適法性を確認する必要があり、国土交通省が公表している管理受託契約の雛形(住宅宿泊管理受託標準契約書)においても、住宅宿泊事業者の届出番号等を記載する欄が設けられています。

6 「住宅宿泊仲介業」(③)について


 住宅宿泊仲介業を行うためには、観光庁長官の登録を受ける必要があります(第46条第1項)。「住宅宿泊仲介業者」とは、この登録を受けて住宅宿泊仲介業を営む者をいいます(第3条第8項)。上記のとおり、住宅宿泊事業者は、宿泊サービスの提供にかかる契約の仲介を委託する場合、「住宅宿泊仲介業者」(または旅行業者)に委託する必要があります(第12条)。
 他方、住宅宿泊仲介業者も、違法行為のあっせん等は禁止されていますので(第58条)、仲介の委託を受ける場合は、適法な民泊業者、すなわち届出をした住宅宿泊事業者より委託を受けなければなりません。
 このように、住宅宿泊事業者と住宅宿泊仲介業者に対して相互に規制がかけられ、違法民泊の排除が図られています。

 国土交通省観光庁次長及び厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官は、民泊仲介サイト運営事業者に対し、平成29年12月26日付けで「違法民泊物件の仲介等の防止に向けた措置について」という通知を発し、掲載物件の適法性(届出番号等)を確認して、違法物件は民泊新法の
 施行日までに削除すること、民泊仲介サイトにおいて届出番号等物件の適法性に関する情報を表示すること、観光庁より違法物件の削除要請を受けた場合は速やかに必要な措置をとること等を要請しています。

7 条例による制限について


 民泊新法は、各都道府県が、騒音の発生等による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、条例により、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することを認めています(第18条)。
 この点、実施の上限日数を「0日」とするような、いわゆるゼロ日規制が報道されていますが、民泊新法のガイドライン(住宅宿泊事業法施工要領)では、民泊新法は健全な民泊の普及を図るものであるので、過度な制限を課すべきではないという基本的な考え方が示されています。

8 施行に向けて


 当事務所でも、民泊関連のご相談が増えてまいりました。何かお困りのことなどございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。


以上
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